4 認知発達型ロボティックス
従来のロボティックスは、知能と身体の合体を目指していた。しかし、知能の組み込みが困難なため、設計の段階でロボットが自ら行動して学習し、内容を発達させていくような仕掛けを組み込もうと考えた。それが認知発達ロボティックスである。
大宮(2010)によると、認知発達ロボティックスとは、知能発達機能が組み込まれた未完成の知能と胴体を合わせて未完成のロボットをまず作り、コミュニケーションや行動からロボット自身が活動の中で知能を発達させていく動的知能学のことをいう。つまり、身体を動かして初めてわかることがロボットの世界でもいえることになる。しかし、ここでは生まれたばかりの赤ん坊のような脳の活動ではなく、あくまで目的達成型の脳の活動を考えていく。
認知発達ロボティックスは、未完成の知能と身体からなる組が上位で目的達成型ロボットと組になると考える。例えば、床掃除のロボットの場合、初めは部屋のどこに埃が溜まりやすいのか分からない。掃除を繰り返す経験知からソファーの下に溜まりやすいことがインプットされると、そこを掃除するときに、自動で吸引力が上がる。
川端の「雪国」では、愛と組むと止揚する無が未知の知能で、愛が行動する身体となり、互いに否定し合いながら、両者を包むより高次の統一体に発展する。この統一体は、「雪国」の中で川端が感謝の気持ちを持って書いている愛情とし、それが目的達成型のAI(=認知発達)と組になると考える。愛とは、価値を認めて大切に思うこと、例えば、学問への愛とか男女や親子の抱擁であり、愛情とは、死んだ親とか恋人を慈しむ心である。
主人公は、実体となりそもそも存在し、主人公を理想の型に入れて加工しながら育てる世界に個物がある。これが川端の創造である。これを「雪国」から読み取れる顔の表情と関連づけながら、川端が求める実体と個物の説明を追っていく。顔の表情は、登場人物の説明の際にどんな作品の中でも使われているし、外界からの情報を受ける感覚器官(五感)とともに顔のシステムの入出力に対応している。
感情は、階層で考えると瞬時の情動と継続の畏敬に枝分かれし、情動は、内からの創発と外からの誘発に分類できる。感情については、行動と組みになることを想定し、森鴎外の「山椒大夫」と「佐橋甚五郎」を分析したときに、バラツキによる統計も含めて「鴎外と感情」というシナジーのメタファーの作り方を説明した。(花村2017: 101)顔の表情は、五感情報により刺激を受けるため誘発の方が多い。しかし、堪えていた感情が何かの拍子に出てしまうのは、創発の表情である。
この論文では、購読脳の「無と創造」という出力が、人工知能の認知発達で目的達成となるかどうかが問題となる。また、人工感情と組になりそうな情報の認知1のセカンドのカラムとして顔の表情を設定し、(1)の公式を考える。
(1)「無と創造」(購読脳の出力)→「(五感)情報の認知1と顔の表情」→「人工感情」→「認知発達」
(1)が確認できれば、川端康成の執筆脳について、「川端と認知発達」というシナジーのメタファーが成立する。遠藤(1974)によると、様相論理の言語とそのモデル構造の分析の中に「無と創造」という組み合せがでてくる。バルカンの原理と呼ばれる様相文がある。モデル構造MQ <K、R、D>(Kは空でない可能世界の集合、RはK上の反射関係、Dは個物の領域)に対して「Qであるものが存在しうるなら、Qでありうるものがすでに存在している」という意味のバルカン文 ((∀x) NPx → N(∀x) Px)(ここでNは必然でPは存在者)であり、何もない無からの創造を否定する言明である。
花村嘉英( 2018)「川端康成の『雪国』から見えてくるシナジーのメタファーとは」より
