魯迅の「阿Q正伝」の相関関係について3

A 非線形性1ある、初期値敏感性1ある
B 非線形性2なし、初期値敏感性2なし
C 非線形性1ある、初期値敏感性1ある
D 非線形性1ある、初期値敏感性1ある
E 非線形性2なし、初期値敏感性2なし
F 非線形性2なし、初期値敏感性1ある

非線形性は、あるなしが3、3、一方、初期値敏感性は、あるなしが4、2になる。
◆非線形性と初期値敏感性それぞれの平均値を出す。
非線形性の平均:(3 + 3)÷ 6 = 1
初期値敏感性の平均:(4 + 2)÷ 6 = 1
◆非線形性と初期値敏感性それぞれの偏差を計算する。偏差=各データ-平均値
非線形性の偏差:(3 – 1)、(3 – 1)= 2、2
初期値敏感性の偏差:(4 – 1)、( 2- 1)= 3、1
◆非線形性と初期値敏感性をそれぞれ2乗する。
非線形性の偏差2乗 = 4、4 
初期値敏感性の偏差2乗 = 9、1
◆非線形性と初期値敏感性の偏差同士の積を計算する
(非線形性の偏差)x(初期値敏感性の偏差)= 6、2
◆非線形性と初期値敏感性の偏差を2乗したものを合計する。
非線形性の偏差を2乗したものの合計 = 4 + 4 = 8
初期値敏感性の偏差を2乗したものの合計 = 9 + 1 = 10
◆非線形性と初期値敏感性の偏差の合計を合計する。
6 + 2 = 8

花村嘉英(2018)「魯迅の『阿Q正伝』から見えてくる相関関係について」より

シナジーのメタファー2

魯迅の「阿Q正伝」の相関関係について2

2 小説の場面に適用する

 阿Qが刑場へ向かう場面でカオスの特性といえる非線形性と初期値敏感性が取れるかどうか見てみよう。それぞれ、1ある、2なしとする。

刑場へ向かう場面
A 阿 Q 被抬上了一辆没有篷的车,几个短衣人物也和他同坐在一处.这车立刻走动了,前面是一班背着洋炮的兵们和团丁,两旁是许多张着嘴的看客,后面怎样,阿 Q 没有见.但他突然觉到了:这岂不是去杀头么?
非線形性1初期値敏感性1
B 他意思之间,似乎觉得人生天地间,大约本来有时也未免要杀头的.他不知道这是在游街,在示众他省悟了,这是绕到法场去的路.
非線形性2初期値敏感性2
C 却在路旁的人丛中发见了一个吴妈.很久违.阿 Q 忽然很羞愧自己没志气:竟没有唱几句戏.“好!!!”从人丛里,便发出豺狼的嗥叫一般的声音来.
非線形性1初期値敏感性1
D 阿 Q 于是再看那些喝采的人们. 四年之前,他曾在山脚下遇见一只饿狼.
非線形性1初期値敏感性1
E 可是永远记得那狼眼睛.又凶又怯,闪闪的像两颗鬼火,似乎远远的来穿透了他的皮肉.而这回他又看见从来没有见过的更可怕的眼睛了,又钝又锋利不但已经咀嚼了他的话,并且还要咀嚼他皮肉以外的东西,永是不近不远的跟他走.
非線形性2初期値敏感性2
F 这些眼睛们似乎连成一气,已经在那里咬他的灵魂他早就两眼发黑,耳杂里嗡的一声,觉得全身仿佛微尘似的迸散了.
非線形性2初期値敏感性1

花村嘉英(2018)「魯迅の『阿Q正伝』から見えてくる相関関係について」より

シナジーのメタファー2

魯迅の「阿Q正伝」の相関関係について1

1 相関の作り方

 シナジーのメタファーのために作成しているデータベースは、データの種類で見ると、俗に言う測れないカテゴリーデータからなる。数量データといわれる身長、体重、気温、湿度などとは異なり、値が連続ではなく飛び飛びで離散的となる。カテゴリーデータは、対象の性質を表したり、現象や、区別を表したりする。性別、好き、嫌い、うまい、まずい、おもしろいなどあるものの性質や現象が示される。(前野2012)
 相関とは原因から結果が生じ、互いに関係しあっていることをいう。また、相関関係があるとは、ある測定値の変化に対して他の測定値も変化する場合に使われる。相関の強さは、ピアソンの相関係数で表す。合わせて共分散という統計用語が重要となる。

(1) 共分散の公式
共分散=[(xの各データ-xの平均値)x(yの各データ-yの平均値)]の和/データ数
   =[(xの偏差)x(yの偏差)]の和/データ数
   = xとyの偏差積の和/データ数

正の相関があると0より大きく、負の相関があると0より小さくなる。

(2) 相関係数(ピアソン)
相関係数=XYの偏差平方和/√(Xの偏差平方和)x(Yの偏差平方和)

「阿Q正伝」の問題解決の場面を用いて、簡単な例を見てみよう。

花村嘉英(2018)「魯迅の『阿Q正伝』から見えてくる相関関係について」より

シナジーのメタファー2

魯迅の「狂人日記」のバラツキについて7

3 まとめ
 
 リレーショナル・データベースの数字及びそこから求めた標準偏差により、「狂人日記」に関して部分的ではあるが、既存の分析例が説明できている。従って、この小論の分析方法、即ちデータベースを作成する文学研究は、データ間のリンクなど人の目には見えないものを提供してくれるため、これまでよりも客観性を上げることに成功している。

【参考文献】
花村嘉英 計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 森鴎外の「山椒大夫」のDB化とその分析 中国日语教学研究会江苏分会 2015
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社2015
花村嘉英 日语教育计划书-面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から 森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018

シナジーのメタファー2

魯迅の「狂人日記」のバラツキについて6

2.2 標準偏差による分析

 グループA、グループB、グループC、グループDそれぞれの標準偏差を計算する。その際、場面1、場面2、場面3の特性1と特性2のそれぞれの値は、質量ではなく指標であるため、特性の個数を数えて算術平均を出し、それぞれの値から算術平均を引き、その2乗の和集合の平均を求め、これを平方に開いていく。
 求められた各グループの標準偏差の数字は、何を表しているのだろうか。数字の意味が説明できれば、分析は、一応の成果が得られたことになる。 

◆グループA:五感(1視覚と2その他)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、0個と特性2、5個)の標準偏差は、0となる。
【数字からわかること】2
作品の中で重要な視覚情報は前半に多く、後半に進むと他の五感情報と併用されている。

◆グループB:ジェスチャー(1直示と2隠喩)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、49となる。
場面3(特性1、1個と特性1、4個)の標準偏差は、0.49となる。
【数字からわかること】
「狂人日記」は、当時の世相を反映させた作品のため、場面1、場面2、場面3を通して、前半直示で後半隠喩というパターンであることがわかる。

◆グループC:情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、1個と特性2、4個)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
場面1、場面2、場面3を通して、前半は旧情報が多く、後半は新情報が多いため、ストーリーがテンポよく展開していることがわかる。

◆グループD:情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
「狂人日記」は、場面1、場面2、場面3を通して、問題解決が予想したよりも多いことがわかる。

花村嘉英(2018)「魯迅の『狂人日記』から見えてくるバラツキについて」より

シナジーのメタファー2

魯迅の「狂人日記」のバラツキについて5

場面3 覚醒2、覚醒3

・那时我妹子才五岁,可爱可怜的样子,还在眼前.妹子是被大哥吃了.他却劝母亲不要哭.大哥说爷娘生病,做儿子的须割下一片肉来,煮熟了请他吃,才算好人.但是那天的哭法,实在还教人伤心. A2B2C2D1
・大哥正管着家务,妹子恰恰死了.我未必无意之中,不吃了我妹子的几片肉. A2B2C2D2
・有了四千年吃人履历的我,现在明白,难见真的人! A2B1C2D1
・没有吃过人的孩子,或者还有?救救孩子. A2B2C1D1

花村嘉英(2018)「魯迅の「狂人日記」から見えてくるバラツキについて」より

シナジーのメタファー2

魯迅の「狂人日記」のバラツキについて4

場面2 説得
・自己想吃人,又怕被别人吃了,都用着疑心极深的眼光,面面相觑. 去了这心思,何等舒服.他们可是互相劝勉,互相牵掣,死也不肯跨过这一步. A1B2C1D2
・我格外和气的对大哥说,“大约当初野蛮的人,都吃过一点人.后来因为心思不同,有的不吃人了,变了真的人.有的却还吃.他们会吃我,也会吃你.但只要转一步,也就人人太平.我们说是不能!”. A2B2C1D2
・他眼光便凶狠起来,那就满脸都变成青色了.大门外立着一伙人.这时候,大哥也忽然显出凶相高声喝到,“都出去!疯子有什么好看!” A1B1C2D1
・预备下一个疯子的名目罩上我.这是他们的老谱! “你们可以改了.要晓得将来容不得吃人的人,活在世上.即使生得多,也会给真的人除灭.” A2B1C2D1
・我回屋子里去.屋里面全是黑沉沉的.横梁和椽子都在头上发抖,堆在我身上.万分沉重,动弹不得;他的意思是要我死. 我晓得他的沉重是假的,便挣扎出来,出了一身汗.“你们立刻改了,从真心改起!你们要晓得将来是容不得吃人的人.”  A2B2C2D2

花村嘉英(2018)「魯迅の『狂人日記』から見えてくるバラツキについて」より

シナジーのメタファー2

魯迅の「狂人日記」のバラツキについて3

2 場面のイメージを分析する

2.1 データの抽出

 作成したデータベースから特性が2つあるカラムを抽出し、標準偏差によるバラツキを調べてみる。例えば、A:五感(1視覚と2それ以外)、B:ジェスチャー(1直示と2隠喩)、C:情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)、D:情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)というように文系と理系のカラムをそれぞれ2つずつ抽出する。

場面1 覚醒1
・昨天街上的那个女人,打他儿子.他眼睛却看着我.我出了一惊,遮掩不住.  A1B1C1D1
・陈老五赶上前,硬把我拖回家中了.家里的人的脸色,也全同别人一样. A1B1C1D2
・他们村的一个大恶人,给大家打死了.几个人便挖出他的心肝来,用油煎炒了吃,可以壮壮胆子.我插了一句嘴,佃户和大哥便都看我几眼.今天才晓得他们的眼光,全同外面的那伙人一模一样.想起来,我从顶上直冷到脚跟.他们会吃人,就未必不会吃我.我看出他话中全是毒,笑中全是刀.他们的牙齿, 全是白历历的排着,这就是吃人的家伙. A1B2C1D1
・照我自己想,虽然不是恶人,况且他们一翻睑,便说人是恶人.我还记得大哥教我做论,无论怎样好人,翻他几句,他便打上几个圈;原谅坏人几句,他便说“翻天妙手,与众不同”. A2B1C1D1
・满本都写着两个字是 “吃人”!书上写着这样多字,佃户说了这许多话,却都笑吟吟的睁着怪眼看我.我也是人,他们想要吃我了. A1B1C2D1

花村嘉英(2018)「魯迅の『狂人日記』から見えてくるバラツキについて」より

シナジーのメタファー2

魯迅の「狂人日記」のバラツキについて2

1.2 標準偏差

 標準偏差は、グループの全ての値によってバラツキを決めていく。グループの個々の値から算術平均がどれだけ離れているのかによって、バラツキの大きさが決まる。
 グループd(1、1、4、7、7)の算術平均は4である。それぞれの値から算術平均を引くと、1-4=-3、1-4=-3、4-4=0、7-4=3、7-4=3となる。この算術平均から離れている大きさを平均してやると、バラツキの目安が求められる。しかし、-3、-3、0、3、3を全部足すと0になるため、さらに工夫が必要になる。
例えば、絶対値をとる方法とか値を2乗してマイナスの記号を取る方法がある。2乗した場合、9、9、0、9、9となり、平均値を求めると、5で割って7.2となる。但し、元の単位がcmのときに、2乗すればcm2となるため、7.2を開いて元に戻すと、√7.2 cm2≒2.68 cmというバラツキの大きさになる。
 
(1) 標準偏差の公式
σ=√Σ (Xi-X)2/n

 次にグループe(1、4、4、4、7)について見てみよう。算術平均は4である。それぞれの値から算術平均を引くと、1-4=-3、4-4=0、4-4=0、4-4=0、7-4=3となる。この算術平均から離れている大きさを平均すると、バラツキの目安が求められる。しかし、-3、0、0、0、3を全部足すと0になるため、それぞれを2乗して、9、0、0、0、9として平均値を求め、5で割って3. 6を求める。
 但し、元の単位がcmのときに2乗すれば、cm2となるため、3. 6を開いて元に戻すと、√3. 6 cm2≒1.89 cmというバラツキの大きさになる。従って、グループdの方がグループeよりもバラつきが大きいことになる。以下では、標準偏差(1)の公式を使用して、作成した「狂人日記」のデータに関するバラツキから見えてくる特徴を考察していく。 

花村嘉英(2018)「魯迅の『狂人日記』から見えてくるバラツキについて」より

シナジーのメタファー2

魯迅の「狂人日記」のバラツキについて1

1 簡単な統計処理

1.1 データのバラツキ

 グループa(5、5、5、5、5)とグループb(3、4、5、6、7)とグループc(1、3、5、7、9)は、算術平均がいずれも5であり、また中央値(メジアン)も同様に5である。算術平均やメジアンを代表値としている限り、この3つのグループは差がないことになる。しかし、バラツキを考えると明らかに違いがある。グループaは、全てが5のため全くバラツキがない。グループbは、5が中心にあり3から7までばらついている。グループcは、1から9までの広範囲に渡ってバラツキが見られる。グループbのバラツキは、グループcのバラツキよりも小さい。  
 次に、グループd(1、1、4、7、7)とグループe(1、4、4、4、7)だと、どちらのバラツキが大きいことになるのだろうか。グループdは、中心の4から3も離れた所に4つの値がある。グループeは、中心に3つの値があって、そこから3離れたところに値が2つある。 
 バラツキの大きさを定義する方法で最も有名なのが、レンジと標準偏差である。レンジはグループの最大値から最小値を引くことにより求めることができる。グループdは、7-1=6で、グループeも7-1=6となる。レンジだけでバラツキを定義すれば、グループdとグループeは同じことになるが、グループ内の最大値と最小値だけを問題にするため、他の値が疎かになっている。そこでもう一つのバラツキに関する定義、標準偏差について見てみよう。

花村嘉英(2018)「魯迅の『狂人日記』から見えてくるバラツキについて」より

シナジーのメタファー2