シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅「狂人日記」8

3 統計処理-相関

3.1 相関の作り方

 シナジーのメタファーのために作成しているデータベースは、データの種類で見ると、俗に言う測れないカテゴリーデータからなる。数量データといわれる身長、体重、気温、湿度などとは異なり、値が連続ではなく飛び飛びで離散的となる。カテゴリーデータは、対象の性質を表したり、現象や、区別を表したりする。性別、好き、嫌い、うまい、まずい、おもしろいなどあるものの性質や現象が示される。(前野2012)
 相関とは原因から結果が生じ、互いに関係しあっていることをいう。また、相関関係があるとは、ある測定値の変化に対して他の測定値も変化する場合に使われる。相関の強さは、ピアソンの相関係数で表す。合わせて共分散という統計用語が重要となる。

(1) 共分散の公式
共分散=[(xの各データ-xの平均値)x(yの各データ-yの平均値)]の和/データ数
   =[(xの偏差)x(yの偏差)]の和/データ数
   = xとyの偏差積の和/データ数

正の相関があると0より大きく、負の相関があると0より小さくなる。

(2) 相関係数(ピアソン)
相関係数=XYの偏差平方和/√(Xの偏差平方和)x(Yの偏差平方和)

「狂人日記」の問題解決の場面を使用して、簡単な例を見てみよう。

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅『狂人日記』」より

シナジーのメタファー2

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅「狂人日記」7

2.2 標準偏差による分析
 
 グループA、グループB、グループC、グループDそれぞれの標準偏差を計算する。その際、場面1、場面2、場面3の特性1と特性2のそれぞれの値は、質量ではなく指標であるため、特性の個数を数えて算術平均を出し、それぞれの値から算術平均を引き、その2乗の和集合の平均を求め、これを平方に開いていく。
 求められた各グループの標準偏差の数字は、何を表しているのだろうか。数字の意味が説明できれば、分析は、一応の成果が得られたことになる。 

◆グループA 五感(1視覚と2その他)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、0個と特性2、5個)の標準偏差は、0となる。
【数字からわかること】2
作品の中で重要な視覚情報は前半に多く、後半に進むと他の五感情報と併用されている。

◆グループB ジェスチャー(1直示と2隠喩)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、1個と特性1、4個)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
「狂人日記」は、当時の世相を反映させた作品のため、場面1、場面2、場面3を通して、前半直示で後半隠喩というパターンであることがわかる。

◆グループC 情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、 0.4 となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、 0.4 9となる。
場面3(特性1、1個と特性2、4個)の標準偏差は、 0.4 となる。
【数字からわかること】
場面1、場面2、場面3を通して、前半は旧情報が多く、後半は新情報が多いため、ストーリーがテンポよく展開していることがわかる。

◆グループD 情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
「狂人日記」は、場面1、場面2、場面3を通して、問題解決が予想したよりも多いことがわかる。

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅『狂人日記』」より

シナジーのメタファー2

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅「狂人日記」6

◆場面3 覚醒2、3

那时我妹子才五岁,可爱可怜的样子,还在眼前.妹子是被大哥吃了.他却劝母亲不要哭.大哥说爷娘生病,做儿子的须割下一片肉来,煮熟了请他吃,才算好人.但是那天的哭法,实在还教人伤心. A2B2C2D1
大哥正管着家务,妹子恰恰死了.我未必无意之中,不吃了我妹子的几片肉. A2B2C2D2
有了四千年吃人履历的我,现在明白,难见真的人! A2B1C2D1
没有吃过人的孩子,或者还有?救救孩子. A2B2C1D1

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅『狂人日記』」より

シナジーのメタファー2

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅「狂人日記」5

◆場面2 説得

自己想吃人,又怕被别人吃了,都用着疑心极深的眼光,面面相觑. 去了这心思,何等舒服.他们可是互相劝勉,互相牵掣,死也不肯跨过这一步. A1B2C1D2
我格外和气的对大哥说,“大约当初野蛮的人,都吃过一点人.后来因为心思不同,有的不吃人了,变了真的人.有的却还吃.他们会吃我,也会吃你.但只要转一步,也就人人太平.我们说是不能!” A2B2C1D2
他眼光便凶狠起来,那就满脸都变成青色了.大门外立着一伙人.这时候,大哥也忽然显出凶相高声喝到,“都出去!疯子有什么好看!” A1B21C2D1
预备下一个疯子的名目罩上我.这是他们的老谱!“你们可以改了.要晓得将来容不得吃人的人,活在世上.即使生得多,也会给真的人除灭.” A2B1C2D1
我回屋子里去.屋里面全是黑沉沉的.横梁和椽子都在头上发抖,堆在我身上.万分沉重,动弹不得;他的意思是要我死. A2B2C2D2
我晓得他的沉重是假的,便挣扎出来,出了一身汗.“你们立刻改了,从真心改起!你们要晓得将来是容不得吃人的人,” A2B2C2D2

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅『狂人日記』」より

シナジーのメタファー2

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅「狂人日記」4

2 統計処理-バラツキ

2.1 データの抽出

 作成したデータベースから特性が2つあるカラムを抽出し、標準偏差によるバラツキを調べてみる。例えば、A:五感(1視覚と2それ以外)、B:ジェスチャー(1直示と2隠喩)、C:情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)、D:情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)というように文系と理系のカラムをそれぞれ2つずつ抽出する。

◆場面1 覚醒1

昨天街上的那个女人,打他儿子.他眼睛却看着我.我出了一惊,遮掩不住. A1B1C1D1
陈老五赶上前,硬把我拖回家中了.家里的人的脸色,也全同别人一样. A1B1C1D2
他们村的一个大恶人,给大家打死了.几个人便挖出他的心肝来,用油煎炒了吃,可以壮壮胆子.我插了一句嘴,佃户和大哥便都看我几眼.今天才晓得他们的眼光,全同外面的那伙人一模一样.想起来,我从顶上直冷到脚跟.他们会吃人,就未必不会吃我.我看出他话中全是毒,笑中全是刀.他们的牙齿, 全是白历历的排着,这就是吃人的家伙.
A1B2C1D1
照我自己想,虽然不是恶人,况且他们一翻睑,便说人是恶人.我还记得大哥教我做论,无论怎样好人,翻他几句,他便打上几个圈;原谅坏人几句,他便说“翻天妙手,与众不同” A2B1C1D1
满本都写着两个字是 “吃人”!书上写着这样多字,佃户说了这许多话,却都笑吟吟的睁着怪眼看我.我也是人,他们想要吃我了. A1B1C2D1

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅『狂人日記』」より

シナジーのメタファー2

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅「狂人日記」3

12 黑漆漆的,不知是日是夜。赵家的狗又叫起来了。狮子似的凶心,兔子的怯弱,狐狸的狡猾。
13 他们大家连洛,布满了罗网,逼我自戕。自己紧紧勒死。要劝转吃人的人,先从大哥下手。
14 忽然来了一个人,年纪不过二十左右。我便问他,吃人的事,对么?含含糊糊的答道,没有的事。他便变了脸,铁一般青,睁着眼说,也许有的,这是从来如此。
15 我直跳起来,这人便不见了。全身出了一大片汗。他也是一伙。这一定是他娘老子先教的。还怕已经教给他儿子了,所以连小孩子,也都恶狼狼的看我。
16 自己想吃人,又怕被别人吃了,都用着疑心极深的眼光,画画相觑。
17 去了这心思,何等舒服。他们可是互相劝勉,互相牵掣,死也不肯跨过这一步。
18 我格外和气的对大哥说。“大约当初野蛮的人,都吃过一点人。后来因为心思不同,有的不吃人了,变了真的人。有的却还吃。他们要吃我,也会吃你。但只要转一步,也就人人太平。我们说是不能!”
19 他眼光便凶狼起来,那就满脸都变成青色了。大门外立着一伙人。这时候,大哥也忽然高声喝到,“都出去,疯子有什么好看!”
20 预备下一个疯子的名目罩上我。这是他们的老谱。“你们可以改了。要晓得将来容不得吃人的人,活在世上。即使生得多,也会给真的人除灭。”
21 我回屋子里去。屋里面全是黑沉沉的。横梁和椽子都在头上发抖,堆在我身上。 万分沉重,动弹不得。他的意思是要我死。
22 我晓得他的沉重是假的,便挣扎出来,出了一身汗。你们立刻改了,从真心改起.你们要晓得将来是容不得吃人的人。
23 那时我妹子才五岁,可爱的样子,还在眼前。妹子是被大哥吃了。他却劝母亲不要哭。大哥说爷娘生病,做儿子的须割下一片肉来,煮熟了请他吃,才算好人。但是那天的哭法,实在还教人伤心。
24 大哥正管着家务,妹子恰恰死了。我未必无意之中,不吃了我妹子的几片肉。
25 有了四千年吃人履历的我。现在明白,难见真的人!
26 没有吃过人的孩子,或者还有?救救孩子。

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅『狂人日記』」より

シナジーのメタファー2

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅「狂人日記」2

1 今天晚上,很好的月光。我不见他,已是三十多年,今天见了,精神分外爽快。那赵家的狗,何以看我两眼呢?我怕得有理。
2 赵贵翁的眼色便怪,似乎怕我, 似乎想害我。还有七八个人,又怕我看见。一路上的人,都是如此。其中最凶的一个人,对我笑了一笑。我便从头直冷到脚跟晓得他们布置,都已妥当了。
3 小孩子的眼色也同赵贵翁一样。廿年以前,把古久先生的陈年流水簿子,踹了一脚。赵贵翁虽然不认识他,一定也听到风声,代抱不平。小孩子,何以今天也睁着怪眼睛。我明白了。这是他们娘老子教的。
4 昨天街上的那个女人,打他儿子。他眼睛却看着我。我出了一惊,遮掩不住。
5 陈老五硬把我拖回家中了。家里的人的脸色,也全同别人一样。
6 狼子村的一个大恶人,给大家打死了。几个人便挖出他的心肝来,用油煎炒了吃。我插了一句嘴,佃户和大哥便都看我几眼。他们的眼光,全同外面的那伙人一抹一样。想起来,我从顶上直冷到脚跟。他们会吃人,就未必不会吃我。我看出他们的暗号。他话中全是毒,笑中全是刀。他们的牙齿是吃人的家伙。
7 照我自己想,虽然不是恶人。况且他们一翻睑,便说人是恶人。我还记得大哥教我做论,无论怎么好人,翻他几句,他便打上几个圈,原谅坏人几句,他便说,翻天妙手,与众不同。
8 满本都写着两个字是吃人。佃户都笑吟吟的睁着怪眼睛看我。他们想要吃我了。
9 大哥说,今天请何先生来。无非借了看脉这名目,揣一揣肥瘠。静静的养几天,就好了。养肥了,他们是自然可以多吃。 真要令我笑死。这笑声里面,有的是义勇和正气,老头子和大哥,都是失了色。
10 老头子对大哥说道,赶紧吃罢。合伙吃我的人,便是我的哥哥。大发见。我是吃人的人的兄弟!
11 医生和大哥是吃人的人。本草什么上明明写人肉可以煎吃。大哥说过可以易子而食,又议论起一个不好的人,他便说不但该杀,还当食肉寝皮。前天狼子村的佃户来说吃心肝的事,他不住的点头。

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅『狂人日記』」より

シナジーのメタファー2

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅「狂人日記」1

1 Lのストーリー

 シナジーのメタファーのために一作家一作品でできることを現状のレベルでまとめている。今後、統計処理など研究の技葉がさらに増えていくように日々精進していきたい。この小論では魯迅(1881-1936)の「狂人日記」が題材になる。 

 私のテキストの分析は、シナジーのメタファーを考察することである。最初に受容と共生からなるLのストーリーを作成し、次にそれが反映されているリレーショナルなデータベースについて分析していく。基本的に、「阿Q正伝」(1922)と同じ方法で、「狂人日記」(1918)について見ていくことにする。すでに魯迅の執筆脳はカオスとして、「魯迅とカオス」というシナジーのメタファーを作成している。「狂人日記」と「阿Q正伝」は、ともにカオスの特徴といえる非線形性と初期値敏感性が取れている。(花村2015)

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅『狂人日記』」より

シナジーのメタファー2

川端康成の「雪国」から見えてくるシナジーのメタファーとは-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ10

6 今後について 

 購読脳の出力「無と創造」と執筆脳のゴール「創造と目的達成型の認知発達」を調節するために、存在の論理の中でバルカン文を置いた。ロジックが想定できると、文理のバランスを取ることができ、全体をまとめる上で役に立つ。さらに文理双方の脳の活動を合わせてシナジーのメタファーとするために、セカンドのカラムとして顔の表情を設け、データベースの分析を濃くする方法について考えた。顔の表情にも無と創造があるためである。 
 今後についても一言述べる。他の作家のデータベースと地球規模に集団の脳の活動として相互依存関係を作り、作家としての人間の条件に危機管理ないしリスク回避を設けて、社会学に基づいた考察を試みた。花村(2018)の中で取り上げた作家(トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖)が試みるリスク回避の研究をさらに展開させるためである。作家同士の依存関係は、クラウドからの束ねるリボンとして医療、観察、数理、文化、家族、教育、福祉、比較などの社会学が管理する。また、国地域に関しては、言語や文化による分け隔てはなく、地球上のどこもが研究の対象となるため、シナジーのメタファーは、すべての言語に適応可能な研究方法といえる。

【参考文献】

遠藤弘 『存在の論理』 早稲田大学出版部 1974 
大宮信光 『ロボットのしくみ』 日本文芸社 2010  
川端康成 『雪国』 講談社文庫 1979  
花村嘉英 『計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?』 新風舎 2005  
花村嘉英  『从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む』 華東理工大学出版社 2015  
花村嘉英  『日语教育计划书-面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで』 南京東南大学出版社 2017  
花村嘉英  「シナジーのメタファーの作り方-トーマス・マン、魯迅、森鴎外、 ナディン・ゴーディマ、井上靖」 中国日语教学研究会上海分会論文集 2018  
原文雄・小林宏 『顔という知能-顔ロボットによる人工感の創発』 共立出版 2004 

シナジーのメタファー4

川端康成の「雪国」から見えてくるシナジーのメタファーとは-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ9

場面A
分析例
 愛を意味する表現があり人格形成もある(無と創造のカラム)。視覚と聴覚の情報は、グループ化とし、顔の表情は、中立にする((五感)情報の認知1と顔の表情のカラム)。AIの感情は愛情となる。しかし、目的は達成されない(人工感情と認知発達のカラム)。
場面B
分析例
 愛を意味する表現があり人格形成もある。視覚の情報は、ベースとプロファイルで捉え、顔の表情は、頬を動かすにする。AIの感情は愛情となる。しかし、目的は達成されない。
場面C
分析例
 愛を意味する表現があり人格形成もある。視覚の情報は、ベースとプロファイルで捉え、顔の表情は、唇を動かすにする。AIの感情は愛情となる。しかし、目的は達成されない。 
場面D
分析例
 愛を意味する表現があり人格形成もある。視覚の情報は、ベースとプロファイルで捉え、顔の表情は肌色にする。AIの感情は人格となる。しかし、目的は達成されない。 
場面E
分析例
愛を意味する表現はなく人格形成がある。視覚と聴覚の情報は、グループ化とし、顔の表情は中立にする。AIの感情は人格となり、目的が達成される。

 (1)の公式と表2の分析例から分かるように、駒子の三味線の稽古の場面でA、B、C、D、Eそれぞれの信号が購読脳から執筆脳へ流れていく中で、最後に目的が達成されているため、この場面では「川端康成と認知発達」というシナジーのメタファーが一応成立している。

花村嘉英(2018)「川端康成の『雪国』から見えてくるシナジーのメタファーとは」より

シナジーのメタファー4