パール・バックの“The child who never grew”(母よ嘆くなかれ)で発達障害と執筆脳について考える10

【連想分析2】

情報の認知1(感覚情報)  
 感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、①ベースとプロファイル、②グループ化、③その他の条件である。
 
情報の認知2(記憶と学習)  
 外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、①旧情報、②新情報である。

情報の認知3(計画、問題解決、推論)  
 受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、①計画から問題解決へ、②問題未解決から推論へである。

花村嘉英(2022)「パール・バックの“The child who never grew”(母よ嘆くなかれ)で発達障害と執筆脳について考える」より

シナジーのメタファー3

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分析例

1 母親が娘の緊張に気がつく場面。     
2 この小論では、「母よ嘆くなかれ」の執筆脳を「追求と救済」と考えているため、意味3の思考の流れ、追求に注目する。  
3 意味1①視覚②聴覚③味覚④嗅覚⑤触覚 、意味2 ①喜②怒③哀④楽、意味3追求①あり②なし、意味4振舞い ①直示②隠喩③記事なし
4 人工知能 ①追求、②救済 
 
テキスト共生の公式   
 
ステップ1 意味1、2、3、4を合わせて解析の組「愛娘と知的障害」を作る。
ステップ2 母親が学習時の娘の緊張に気がつくため、「追求と救済」という組を作り、解析の組と合わせる。  

A ①視覚+①喜+①あり+①直示という解析の組を、①追求+②救済という組と合わせる。
B ⑤触覚+①喜+①あり+①直示という解析の組を、①追求+②救済という組と合わせる。
C ⑤触覚+②怒+①あり+①直示という解析の組を、①追求+②救済という組と合わせる。 
D ①視覚+③哀+①あり+①直示という解析の組を、①追求+②救済という組と合わせる。
E ①視覚+③哀+①あり+①直示という解析の組を、①追求+②救済という組と合わせる。

結果 表2については、テキスト共生の公式が適用される。

花村嘉英(2022)「パール・バックの“The child who never grew”(母よ嘆くなかれ)で発達障害と執筆脳について考える」より

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【連想分析1】
表2 受容と共生のイメージ合わせ

母親が娘の緊張に気がつく場面 人工知能
A The details of those months is unimportant now, but I will simply say that I found that the child could learn to read simple sentences, that she was able, with much effort, to write he name, and that she loved songs and was able to sing simple ones. 意味1 1、意味2 1、意味3 1、意味4 1、人工知能1
B What she was able to achieve was of no significance in itself. I think she might have been able to proceed further, but one day, when, pressing her always very gently but still steadily and perhaps in my anxiety rather relentlessly, I happened to take her little right hand to guide it in writing a word.意味1 5、意味2 1、意味3 1、意味4 1、人工知能1
C It was wet with perspiration. I took both her hands and opened them and saw they were wet. I realized then that the child was under intense strain, that she was trying her very best for my sake, submitting to something she did not in the least understand, with an angelic wish to please me. She was not really learning anything. 意味1 5、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1
D It seemed my heart broke all over again. When I could control myself I got up and put away the books forever. Of what use was it to push this mind beyond where it could function? be She might after much effort be able to read a little, but she could never enjoy books. 意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1
E She might learn to write her name, but she would never find in writing a means of communication. Music she could hear with joy, but she could not make it. Yet the child was human. She had a right to happiness, and her happiness was to be able to live where she could function. 意味1 5、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能2

花村嘉英(2022)「パール・バックの“The child who never grew”(母よ嘆くなかれ)で発達障害と執筆脳について考える」より

シナジーのメタファー3

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【データベースの作成】

表1 「母よ嘆くなかれ」のデータベースのカラム

項目名 内容 説明
文法1 態 能動、受動、使役。
文法2 時制、相 現在、過去、未来、進行形、完了形。
文法3 様相 可能、推量、義務、必然。
意味1 五感 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
意味2 喜怒哀楽 情動との接点。瞬時の思い。
意味3 思考の流れ 追求ありなし
意味4 振舞い ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。
医学情報 メンタルヘルス 受容と共生の接点。購読脳「愛娘と知的障害」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。  
情報の認知1 感覚情報の捉え方 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイルやグループ化または条件反射。
情報の認知2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報については、カテゴリー化する。学習につながるため。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。
情報の認知3 計画、問題解決、推論 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
人工知能
追求と救済 エキスパートシステム 追求とは、後を追いかけて求めること。救済とは、救い助けること。

花村嘉英(2022)「パール・バックの“The child who never grew”(母よ嘆くなかれ)で発達障害と執筆脳について考える」より

シナジーのメタファー3

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4 分析

 データベースの作成方法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
 こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味の解析をし、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。

花村嘉英(2022)「パール・バックの“The child who never grew”(母よ嘆くなかれ)で発達障害と執筆脳について考える」より

シナジーのメタファー3

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 日本成人病予防協会(2014)によると、学習障害とは、知的発達の遅れはないが、利く、話す、読む、書く、計算するといった能力のうち特定のものの習得が困難な状態を指す。中枢神経に何らかの機能障害があるという。
 彼女にとって楽しい場所は彼女の家である。9歳まで娘と過ごし、彼女の最後の家を探した。(P45)一方、障害児の施設では責任者に問いただす。キャロルは、何も学ぶことができないと。しかし、できるという。一人でできなければ、誰かが助けるからである。但し、精神年齢は上がらない。(P53) 
しばらくして娘を施設に連れて行った。成長するためである。彼女は私に縋るも、別離のときである。無論、ときどき会いに来るし、娘も戻ってこられる。 
 子供たちは、楽しそうである。幸せな子供たちで、苦痛を知らない。まずは幸せがあり、全てがそれについて来る。一月会わずに過ごす。手紙も書けないのは、残虐行為のようである。しかし、婦長はいう。彼女は、学んでいるときが幸せだと。(P57) 
 娘は、私に我慢を教えてくれた。はっきりといえないが、伝達するために別の方法がある。精神の発達障害は、他の善良な性質で補うことができる。これは、社会性成熟度診断法により明らかになっている。(P63)回避できない悲しみと一緒に生活するときは、心地よさを見出す方法も学ぶことになる。 
 親の責任を問う。一つは、できるだけ施設を訪問し、子供を預かる人を見る。もう一つ、暮らしの雰囲気が有望であることが大切である。(P67)
 アメリカの知的障害の50%は、教育を通して社会の生産的なメンバーになれる。6歳未満の知能の成人が19種類の仕事を行い、全体の20%の仕事を非熟練労働者が担当している。教育こそが社会の組織を救済す一例である。(P72)
 脳への血液供給量が減少することにより精神薄弱の症状が現れる。手術による改善は、30%余りであり、警戒心、強い欲求、短気な性格が治ってくる。適切な教育や環境が整えば、半分以上の知的障害者が普通の社会で生活し、仕事をすることができる。悲劇の多くが不要だと認識してもよい。
 そこで“The child who never grew”の購読脳は「愛娘と知的障害」にし、執筆脳は「追求と救済」にする。双方を統合したシナジーのメタファーは、「パール・バックと愛娘の病跡」にする。 

花村嘉英(2022)「パール・バックの“The child who never grew”(母よ嘆くなかれ)で発達障害と執筆脳について考える」より

シナジーのメタファー3

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 身体障害は、避けられない悲しみである。メンタルの成長がない子供たちに罪はない。中国では、何代もの家族が同じ屋根の下で暮らし、相互に責任を負っている。こうした家族の家は、無力の人を世話する場合に理想である。(P40)しかし、アメリカの施設には、大好きな母も中国人の看護婦もいない。 
 娘が母親から離れる前に一年かけてできる限り彼女の能力を試してみた。娘の将来に関し最善の選択をするためである。読んだり、書いたり、色を識別したりなど。確かに音楽が好きで、楽譜を学び、歌を歌った。(P41)
自閉症は、3歳ぐらいまでに現れ、中枢神経に何らかの機能不全があるとされる。キャロルの場合、言葉の発達が遅れている。会話が続かない、ことばのオウム返しが気になる。
 南京の暴動ため、外国人は中国を離れた。母と娘は、春になって日本の長崎に行った。小さな日本の木造の家で楽しい夏を過ごした。原始的な方法で家事をこなし、木炭の火鉢で米や魚を料理し、果物を食べた。娘とともに鉄道で日本を旅した。宿泊の際には、女中が世話をしてくれた。食事も風呂も寝具も用意してくれた。娘に対する違和感はない。彼女は受け入れられた。(P43)
 クリスマス前に中国の上海に戻った。娘は平易な文章を読むことができ、自分の名前を書き、歌が歌えた。しかし、彼女の両手が濡れているのに気づいた。強い緊張のためである。全然楽しくはない。本当は何も学んでいなかった。到達度は、かなり低く、学習障害の症状が見られる。緊張が強ければ、ストレスが強く心の病気になる。

花村嘉英(2022)「パール・バックの“The child who never grew”(母よ嘆くなかれ)で発達障害と執筆脳について考える」より

シナジーのメタファー3

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3 作家パール・バック 

 瞳が綺麗な笑顔の可愛い赤ん坊であった。しかし、キャロルが3歳のときに、会話の習得に異常を感じ、小児科の専門医を訪ねた。医者は、子供の過去や病歴そして高熱、風邪について質問してきた。しかし、生まれてから身体の異常などはなく、健全であり、怪我もしたことがなかった。中国では、何かが悪いそれしかいえない。アメリカに連れて行けば、何が悪いのかを突き止めることができる。(The child who never grew P17)
日本成人病予防協会(2014)によると、子供の心の病気は、発達の過程が正常からずれた発達障害と生育や対人関係などに起因すると考えられる行動と情緒の障害がある。キャロルの場合、前者の症状が見て取れる。
 アメリカのミネソタ州にあるクリニックで検査を受ける。小児科の先生は、検査結果を見て、身体的な問題はないとした。彼女は、音楽に興味を示した。しかし、メンタル面の遅れについては、理由がわからない。(P22)話しは上手くなく、読み書きもできないであろう、と彼は指摘した。彼のいうことを受け入れながらも、母親として試案をつづけた。(P25)
発達障害は、自閉症、アスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥・多動性障害といった脳機能の障害であり、その症状は、通常低年齢で現われる。
 キャロルは、確かに教会の音楽、特に讃美歌が好きである。ジャズは嫌いだが、クラシックは聞く。例えば、ベートーベンの第五交響曲に興味を示すも(P29)、趣味や関心は、特定のものに限られる。

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2 人間パール・バック

 パール・バック(1892-1973)は、ウェスト・ヴァージニア州のヒルスボロで生まれ、生後4カ月で両親とともに中国の江蘇省の鎮江に渡った。そのため、英語と中国語は、堪能であった。その後、中国で過ごすも大学教育を受けるにあたり米国に帰国し、再び宣教師として中国に戻る。南京の大学で英文学を教えることになり、米国人宣教師のジョン・ロッシング・バックと結婚する。知的障害があるキャロルを授かる。1926年の南京事件の際は、長崎の雲仙に避難した。その様子は、「津波」に書かれている。その後、中国に戻り、本格的に作家として執筆活動に入った。   
 “The child who never grew”(1950)は、娘キャロルの回想であり、成長が止まってしまった我が子の病気の跡を辿るストーリーである。
 出産ができなくなり、六人の孤児を養子として育て、ウェルカムハウスという養子仲介機関を設立した。その後、米国、アジアを問わず、子供の教育のためにパール・バック財団を設立し、平和活動の支援もした。
1960年にテレビ映画「津波」の撮影のために来日したこともある。

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シナジーのメタファー3

パール・バックの“The child who never grew”(母よ嘆くなかれ)で発達障害と執筆脳について考える1

1 先行研究

 文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し、全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でシナジーのメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが重要である。 
 執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875-1955)、魯迅(1881-1936)、森鴎外(1862-1922)の私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923-2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動が意欲と組になることを先行研究に入れておく。 
 筆者の持ち場が言語学のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。文学の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なおLのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。

花村嘉英(2022)「パール・バックの“The child who never grew”(母よ嘆くなかれ)で発達障害と執筆脳について考える」より

シナジーのメタファー3